2012/11/22
ダンナさんアイドルに会う



江口美幸です。先日、ダンナさんが帰ってきて言いました。「なんか、アイドルのライブで演武するっていう仕事が入ったよ」
「アイドル?AKB?」アイドルといえばAKBしか知らない私がそう聞くと、同じくそれしか知らないダンナさんは「いや、それじゃない。聞いたことない名前だった。えーっと」と、自分が書いたメモを取り出して、「ももいろ、くろ、はいいろだって」「え?何?もう一回言って」「ももいろくろはいいろ」「全然聞いたことないし、全然アイドルっぽくない名前・・・黒とか灰色とか。あんまり売れてないアイドルなのかな」「俺もそう思うんだけど、武道館でやるって言ってたよ。どういうことなのかなあ」

・・・2日後に、それは「ももいろクローバーZ」というアイドルグループだということが判明しました。「ももいろ」という文字を観た瞬間、ダンナさんの脳が全部「色」と認識してしまったらしく、また大変汚い字で走り書きしたので、クローバーが黒、灰、でZが、色、に見えたらしいです。というか、自分の書いた字が後で読めなかったら、もうメモする意味は全くないです。
そしてそのグループは今非常に人気があって、もしかしたら現在のアイドルでトップかも!?という、すごいグループらしいのです。
・・・あ、いえ、関係者の人達に失礼になるので言い訳しますと、私達夫婦って、ほとんどテレビ見ないし、芸能人の名前なんて全くと言っていいほど知らないんです。AKBっていうのだってそのグループ名を知っているだけで、その中の誰ひとりとして顔も名前も知らないし・・・。だってうちのダンナさんって、強くなること以外興味ないんだもん!

で、全日本が行われた次の日、ダンナさんはその仕事に出かけてゆき、夜遅くに帰ってきました。
「おかえりー、どうだった?」と私が聞くと、「うん・・・全部で5人だったよ。ももクロっていうんだって。略してももクロ」と、私が思わず(直接会って、それか!)と突っ込んでしまうようなことを言いましたが、それからお風呂に入ってビールを飲み始めると、「男祭り」というタイトルのライブだったこと、客は男性限定だったこと、やったのは、彼女たちを中心にして円状になって並び、正拳中段突きをしたこと、全席指定で5時半会場なのに1時にはファンの行列が出来ていてびっくりしたこと、支部長の誰もが知らなかった、アンコールの曲の全歌詞と、タオルを上に上げたりするタイミングを、手伝いで連れていったうちのタケちゃん指導員がなぜか全てマスターしていて、彼のお陰で皆が助かったこと、などを少しずつ話してくれました。

でも、なんとなくダンナさんの表情が冴えません。「どうしたの?疲れた?」と言うと、「ううん、そうじゃなくて・・・とにかく、若くて小さいんだよ。中高生にしてもあれは小さい子達だ。でね、小さいから、アクロバティックで激しいダンスをしていて、本当にすごいんだ。ライブは2時間以上続くんだよ。その体力も凄いけど、振り付けを覚えるだけでも、とても大変なはずだよ」
ダンナさんは悲しげに、「あの子達は、大人になったらどうするんだろう?絶対に、学校には行ってないと思うんだよ。毎日、練習に練習を重ねないとあれは無理だ・・・勉強はほとんど出来てないと思うんだよね・・・」
「あー、そういうことか」うちのダンナさんはもう、父親としての目でしかアイドルの子達を見られなくなっていたのでした。
「本当に、努力してる子達だと思うんだよね・・・でもなあ・・・」ダンナさんはビールを飲みながら、切ない表情でため息を何度もついていました。

私がふと、「顔を憶えたり、名前を憶えたりできた?」ときくと、「それはできなかったけど。でも、あの子達は色分けされてるから大丈夫なんだよ」「色分け?」「うん。赤の子は、赤の服しか着ないの。俺はその赤の子チームだった」「それは今日だけそうなの?それともいつもそうなの?」「それはわからない」と、まあ、結局、ほとんどわからない状態で終わってしまったのでした。でもダンナさんは名前こそ覚えられませんでしたが、本気で彼女達の将来を案じ、心を痛めていました。

それから、「角田さんが来てた」と思い出したように言ってました。角田信朗さんが来ていて、男らしい歌を歌ったらしいです。「あの人は、会うごとに黒くなってる。今はもうチョコレートみたい」と言っていました。