2012/4/14
運動会



江口美幸です。子供が保育園に通っていると、色々な行事があります。少し前の話になりますが、運動会がありました。去年までは、子供が踊ったりしているのを見守るだけで済んだのですが・・・今回は、「親子リレー」と「親子ダンス」というのがあったんです。
親子ダンスはいいとして、親子リレー、です、問題は。だって私たちは、いうなれば運動のプロ。はっきり言って、昔、陸上のプロだったという人がいるのでもない限り、勝つに決まっています。プロが、このような運動の行事においては、どのようにふるまうのが適当なのか?
運動会前日、私とダンナさんとの間で、小会議が行われました。議題は、私たちは、本気で走ってよいものか、どうか?ということです。

私「いや、さすがにまずいんじゃないの?例えばさ、みんなで原っぱでバレーして遊びましょう、っていう時に、川合俊一が来て、渾身のアタックを決めたら、みんな不愉快になるじゃない」
「だよなあ、でも、いかにも力を抜いて走って負けたら、一緒のチームのお父さんたちに、むっとされないかなあ」
「うーんそうだね、子供の行事でも勝負事に真面目な人、いるからねえ。それに、私たちのせいで負けたら、一緒のチームの子供とか、うちの娘も、ちょっとかわいそう」
「あんまり遅いと・・・俺の職業知っている人で、力抜いてるってわからない人に、あら、空手の師範って遅いのね、って思われるのも嫌だなあ」
「フルパワーで走らなくて、でも空気を読んで、微妙な上位の位置で、このくらいがちょうどいいかな?という走りをすることが大事だね」
「そんな気を使うこと、俺には難しいよ!じゃあ、それはママに任せるよ。俺はその代わりに、親子ダンスに出るから」
ということで、普通は、体力を使うリレーは父親が出るのですが、うちの夫婦は、私が出ることになりました。

運動会当日。スムーズに進行してゆき、「次は親子ダンスでーす。出られるお母さん、集合してくださーい」と保育士さんが明るく言って、お母さんたちが集まった中、唯一の男性のうちのダンナさんが、不動立ちをして、その中にいました。
保育士さんは、気のせいか一瞬、はっとした表情をしましたが、すぐに、「じゃあ、お母さん達・・・、と、お父さん、これを付けてくださーい」と、かわいらしい、ウサギとか、コアラとかの顔が描かれたものを服に付けられて、それから、“シュシュ”っていうんですかね、ゴムに、ふわふわしたものがたくさんついているものを二つ渡されていました。他のお母さん達が髪に飾ったりしている中、ダンナは、仕方なく両手首にはめましたが、かなりシュシュはぴちぴちしていましたね。
で、そのダンスは、とても可愛らしいもので・・・、うちのダンナさんが微笑みを浮かべながら踊っているその姿は、そりゃあもう、大変気持ちが悪かったです。

さて、問題の親子リレーです。集合して並んでいる時、他のお父さん達が一生懸命にアキレス腱を伸ばしたり腰を回したり、「明日、会社に行けるかな・・・」などと呟いているのを横目で見ながら、私は、運動不足気味の普通の主婦だ、という雰囲気を全身から発して、きゃあ、お手柔らかに・・・という感じで、体をくねくねさせておりました。
親子リレーのルールは、はじめに子供が走り、自分の親にバトンを渡します。それが唯一の決まりで、保育士さんがそれを説明して、みんなで練習もしました。
うちの娘は第一走者。さて、奴の速さによって、私がどのくらいの速さで走ったらよいのかが決まります。うちの娘、足は遅いんですが、先生たちの気遣いで、遅い子は一緒の遅い子グループになるため、その中では一番で走ってきました。(これだったら、抜かされないことだけ意識して流して走れば、そのまま、ぎりぎりなよい感じで一番だな・・・よし)と心の中でペース配分が決まり、微笑みながら、バトンを渡される位置で待っておりました。

・・・ところが!うちの娘は一体何を考えているのか。後二歩くらいで私にバトンが渡る、その瞬間、すいっと横に行き、全く関係ない親御さんのところに走って行き「はい!」とバトンを渡そうとしたのです。その親御さんはもちろんびっくりして、「えっ!違うよ!ここじゃないよ、戻って、戻って」と手を振っています。
私は慌ててそこに走って行き、「ちょ、ちょっと」とバトンを娘の手から奪い取りました。振り向くと、もうすっかり遥か先方に走ってゆく他のお父さん達・・・。ちょっと待って、これって、負けた場合、間違いなくうちの娘のせい。うちの娘のせいでこのリレー、ひいてはうちのチームが負けたとすると・・・。
私の頭の中に、○○ちゃんのせいだよ!と他の子に責められている娘の姿が浮かびました。
・・・次の瞬間、私は全力でダッシュしておりました。心の中で、あーもう!あんたって子は!と叫んでいました。

はい、もちろん、全員、ぶっちぎりで抜かしましたよ。私のロケットダッシュに、他の親御さんはどよめき、ざわつき、そして、今どきの言葉で言うと、ドン引き。
私に抜かされた父親の方達だって、自分の子供の前で、女性に負けたくはなかったでしょうね。それは充分にわかっていたし、私だってそんなことしたくはなかった。でも、私は、自分の子供を守らなくてはいけなかったんです!ごめんなさい、許してください!
・・・さっきまで和気あいあいと話していた他のお父さんが急によそよそしくなったような気する帰り道、自分のしたことが全くわかっていないうちの子は「皆が頑張ったから勝ったんだよね!よかったね!」とはしゃいでおりました。
そうだなあー、あなたが間違わなければママは頑張る必要はなかったんだけどねー、と心の中で呟きながら、とぼとぼと帰ってきたのでした。やれやれ。


「これも保育園の行事。親子遠足で動物園に行きました。」