2016/3/5
【ナナ】



八王子 八王子みなみ野担当の大谷です。

やって来ました二十五回目。 もうネタがないよ。 Who is the Monster...You or Me 怪物はだれ? あなた それとも私? さて何書くか・・・

生誕85年、 フランスはパリ、 グラン・パレにて何と60万人にも集めたというニキ・ド・サンファル大回顧展。 その影響を受けて 日本でも初の本格的な大回顧展、 ニキといえば美しくも格好いい【射撃絵画】 代表作【ナナ】も勿論登場。 何故 今 ニキなのか? 謎解きのため いざ乃木坂へ。

父親は貴族階級出身のフランス人、 母親はアメリカ人、 写真の中の一家の姿は幸せそうな家族の肖像に見えますが 内情は違います。 父親の繰り返される浮気に耐える妻、 女性の地位が低かった時代、 それでも母親は 娘には社会的地位のある裕福な人と結婚するのが一番幸せなことだと言い聞かせます。 反発するニキ、 「母のように暖炉の番をするだけの人生は送りたくない」。 しかし 11歳のとき 何と父親から性的虐待を受けます。 14歳のときには精神が不安定になり、 その行動に対して担任の先生に学校を辞めるよう迫られます。 18歳のときには一念発起してモデルになり 19歳のときには偽善の家族から逃げたかったのか両親の反対を押しきって海兵隊員の男と駆け落ちをします。 しかし 伝統的な価値観の時代、 母親と同じように 家庭の中に縛りつけられてしまうのではないかとの不安 消えない父親の暴力の記憶 20代、 ついに精神を病んでしまいます。 カウンセリングのための絵を描く行為。 しかし これが切っ掛けで芸術家を目指すことになります。

ジャン・ティンゲリーや様々なアーティストとの関わりを持つことにより、 ヌーボー・レアリスム宣言(廃棄物を用いて美術品を作り、 工業化社会の新しいリアリティを模索する)に参加 現代アートに目覚めたニキ ついに夫と子供と別れ 覚悟を決めアートの世界に進みます。 30代となって生まれたのが パフォーマンス・アート【射撃絵画】。 ペンキの詰まった缶を石膏で塗り固めたレリーフを作る。 それを片っ端から22口径のライフルで撃ち抜いていく(汗)・・・。 破裂し撒き散らされるカラフルなペンキ。 その姿は男(暴力)社会に闘いを挑む女戦士、 まさにブッ放つ 「家族 母 ダディ(父) すべての男たち そして私自身に向けて撃った・・・」 出来上がった作品は見るも無残ですが、 射撃するニキの姿そのものがアート・・・美しい 実に格好いい・・・実際の暴力で相手の肉体や精神を傷つけることはしない。 これがニキなりの答え「テロリストになる代わりに 私はアーティストになった・・・」 この行為はニキにとっては最高のリハビリだったらしく この時期の身体は絶好調だったらしい。 しかし 快感か ら来る常習性 手の震え 銃に依存している自分に危機を感じ 2年で辞めてしまいます(涙)。

友人の女性が妊娠している姿を美しいと感じたニキは 新素材ポリエステルを使った土偶のような代表作 彫刻【ナナ】を産み出します。 この作品は女性の解放運動の象徴となり シリーズ化していきます。 「彼女たちは踊る 世界中の音楽と一緒に踊る 歓喜と踊る ナナたちは女の誇り 偉大な母性の誇り」。 ティンゲリーとの合作では これまで男の暴力の象徴として度々描かれてきた蛇 その蛇の上で軽やかに舞うカラフルなナナ 社会でのこれからの女性の生き方を暗示しているかのようです。

40代になり 仕事のパートナーとなっていたティンゲリーと結婚。 しかし 2人は同居と別居を繰り返す不思議な関係でした 互いに違う恋人が出来て 家を出て行ったとしても 大事なときには一緒にいるという(驚き) まるでサルトルとボーウ゛ォワールの関係みたいで 彼等もまた 互いに違う恋人がいて 離れていたとしても その日の夕食は必ず一緒に過ごすという・・・まさに変態です。 実際 ニキにとってボーウ゛ォワールは愛読書のひとつでした。 お互いを尊重し対等に議論を交わす、そんな緊張状態が創作のインスピレーションを与えていたのかもしれない。 「私と彼の人生にとって最大の愛は芸術だった 芸術とお互いの尊敬は 人生を通じて私たちをつなぐ赤い糸だった」。

50代になると 若い頃に見て感動したグエル公園(アントニ・ガウディ作) このような幻想公園を創りたいと活動を始めます。 【タロット・ガーデン】モチーフはタロットカード 教皇 女教皇 皇帝 女帝 力 恋人 戦車 愚者 隠者 魔術師 節制 塔 正義 悪魔 死神 吊るされた男 審判 星 月 太陽 運命の輪 世界など テーマごとに作品を創り 晩年には住み込んで創作を指揮します。 構想から20年以上を要し オープン時には 何と68歳になっていました。

70歳 世界文化賞 彫刻部門賞受賞

「私は世界を変えることはできない でも女性たちが作る幸せな社会のビジョンを見せることはできる・・・」。 社会の変革は出来ない 金も 事業も 遺せない・・・でも意志のある生き方は遺せる・・・男と女には上も下もない 必要なのは尊重と配慮 そして勇気 そう考えさせるニキの生き方。

人は女に生まれるのではない 女になるのだ。 シモーヌ・ド・ボーウ゛ォワール

果たして我が輩はニキを理解出来たのであろうか? 次回がないことを祈りつつ・・・。