2017/10/20
「金原先生、入院する」



江口美幸です。

金原先生が入院してしまいました。
あの頑丈そのものの先生が。10年に一度くらいしか風邪を引かない先生が。
それが普通だと思ってるから、一年に一、二度風邪を引く私に
「どこか体おかしいんじゃない?調べてもらった方がいいよ」
と言った先生が。もうびっくりです。

先生の病気は、感染性心内膜炎と、ばい菌が腰の骨に付いてしまう、椎体炎。この椎体炎が、もう激痛らしいのです。

入院して5日間は痛みでピクリとも動けず、一週間経って、やっと寝返りがうてるようになりました。5日間の間、先生はひたすら天井を見上げていたそうで、それはそれは辛かったと言っていました。確かに、それは辛いでしょうねえ…。
プロの格闘家で、数え切れないほどの怪我をしてきた先生が、
「こんな痛いの、生まれて初めて」
と言ったくらい痛いらしく、いやはや、恐ろしい…。

入院して2日で早速、隣のベットのおじいちゃんが
「イビキがうるさい」とか「電話で話す声がうるさい」
とか、先生に聞こえるように看護師さんに悪口言ってたそうですが、そんな最中の3日目、いきなり、アリスター・オーフレイムさんがお見舞いに来てしまいました。
あの2メートル近くある黒人の筋肉のお化けみたいな人が「カネハラ〜!!」と病室に入ってきたら、隣のおじいちゃん、絶対に文句言えない…。

そのせいか、私がお見舞いに行った時は、先生はまだ他に人がいない病室に移されておりました。
先生は、元々毛深い人ですが、髪の毛が伸び、髭も伸びていたので、本当に私が描く熊そっくりになっていました。
私を見て、
「美幸さん!こんなになっちゃった。全然起き上がれない!もー、落ち込んだ!すごく落ち込んでるよ!」
と、とても大きな声で言ったので、ああ、先生は元気だなと思いました。

お見舞いに行く前に、
「何か欲しいものはありますか?」
ときいたら
「寿司が食べたい」
ということだったので、お寿司を買って行きました。
起き上がれないので、横になりながら箸でお寿司をつまんで、パクッと食べて
「ああ〜、寿司美味い!」
と、心から言ったので、念の為に2パック買って来て良かったと思いました。ふと壁の方を見ると、ハンバーガーの空き箱もありました。
「病院食、やっぱり足りないですか」「もう、少なすぎる。全然足りない。たんぱく質も全然ない」
昨晩のメニューを聞いたら、私にも足りない量で、それは先生には辛い…。
「それじゃあ筋肉落ちちゃいますね」「もう落ちてるよ!もう脚なんか、テロンテロンになってる」
先生の脚を見たら、私には丸太のような太い脚にしか見えなかったのですが、自分では筋肉が落ちているのが良く分かるのでしょう。

しばらくおしゃべりして、
「ええ〜もう帰るの?!寂しいじゃん!8時までいればいいじゃん!」「い、いや仕事が…面会の最終時間まではちょっと」
と病室をあたふたと出て帰りました。
先生、声は相変わらず大きくて元気だったけど、やっぱり落ち込んでたなあ…と、気の毒で、せつない気持ちになりました。

基本的に金原先生は寂しがりやだから、なるべくお見舞いに行こうと思っていますが、先日、ソンラム先生にも伝えようと思い
「先生、金原先生が入院しちゃいました」
と言ったらソンラム先生は驚き
「ええ?!なんで」「菌が、血液の中に入って、腰の骨に付いちゃったの。まだ腰が痛くて動けないんです」
そう言った瞬間、ソンラム先生は、ああ!と深く息を付き、エアコンを指さして
「冷房をあんなに強くしたからだよ」
と言いました。私は一瞬笑ってしまいましたが、
「いや違いますよ。歯から入ったらしいですよ。歯医者に行った日に、すごく腰が痛くなったんです」
先生は深く頷き、
「歯医者に行ってばい菌入る。普通だったら何ともない。でも冷房に当たるとばい菌が増えて全身に回って、病気になるんだ」
と、きっぱりと言いました。ソンラム先生にとって、冷房は正に悪魔の機械なのでした。
あまりに確信に満ちていたので私もそれ以上否定できず、
「アーチャ・チャイ…(そうかもしれません…)」と、言いました。
ソンラム先生は続けて
「でも大丈夫だよ。彼は性格が明るくて声が大きいでしょ」「はい」
先生、とても金原先生のことを分かっているなあと思っていると、
「そういう人は治るよ。性格が明るいと菌は死ぬんだ。暗い人は、どんどん不安になって菌が増えちゃうから、ひどくなっちゃうんだよ」
じゃあ、ソンラム先生は駄目なんでは…と、うっすら思いましたが、おとなしく聞いていると、
「だから大丈夫だって言っといて。後、もう冷房を強くするなって、言っておいて」「はい。伝えます」

ほぼ、ソンラム先生の個人的なお願いのような気もしましたが、帰ってから金原先生にメールで
「…ということで、もう冷房を強くするなと言っておりました」
と送ると、すぐに返事が返ってきて、そこには一言、
「それはメイダーイ!(タイ語で、できない!」
と書いてありました。

先生が早く治ることを心からお祈りしております。